ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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ヤマトタケル

 3月、空港でイサクと落ち合うとわたしは手続きを全てイサクにまかせて日本でのスナイとの夢でのやりとりをもう一度おさらいしていった。
 そのなかでも特に印象的な現象を思い出してわたしはしばし中空を見つめていたようで、イサクがもどってきたのにも気がつかなかった。
「なに?白昼夢でも見てるんじゃないだろうな?おい。」
「えっ?ああ、違うわよ。ちょっと思い出してただけ。」
「何を?」
「言ったと思うけど、”ナナ”が紹介してくれた日本の神様のこと。」
「ああ、イザナギノミコト?」
「うん。」
 
 ある晩のことだった。
 真夜中、俗にいう”丑三つ時”のことだ。
 スナイの夢をみるときはいつもその頃か、もしくは明け方が多かった。
 その日もふっと意識が浅くなってきて半分起きかかったような状態になったとき、スナイの声がした。
『ナナ、”ナナ”からの紹介だよ。日本の神々だ。』
 えっ?と思っていると、なにやらざわざわとしたさざめきがきこえた。
 それはまるでお茶の間でちゃぶ台をかこんで隣の家の家族がさざめきあっているようなそんな印象の存在感だった。
 そうこうするうちに寝室の壁がないような感覚になってきて、そのぽっかりとひろがった空間いっぱいに存在する『ファミリー』の中でもひときわ大きい存在のことをなんと表現したらいいのかナットクしている自分がいた。
 同時に直感が来た。
(イザナギノミコト・・・。)
 と同時になにか文字の印象。
 それは、わたしの分かる意味に翻訳するとこう読めた。
(日本武尊?)
 そしてその字面が自分に響き渡っているうちにイザナギファミリーの存在の印象はいつしか遠のいていった・・。
 
 メモ書きをめくりながらイサクにつぶやいた。
「なんで”ナナ”のことを調べようという時に日本の神なのかしらね?」
「さア。それももうすぐあっちで聞けるさ・・。」
 飛行機は予定通り夕暮れの空港を飛び立つ。一番好きな時刻。夕暮れの空港は様々な想いが自然ににじみでてくる。
 それもどこかはるかな気持ちをいざなうので、肯定的な安らぎを感じさせられる。
 
 長時間のフライトを終えると、空港までワシリーが迎えにきてくれていた。
 彼女は旧家に嫁いだわりには現代的、行動的で家事もほとんど自分でこなし、それも楽しそうに軽やかにやっていた。
 昔はお手伝いさんを置いていたそうだが、ワシリーが来てから老齢のお手伝いさんの引退にともなって新しい人は入れなかったそうだ。こうして客人の送迎までする。
 ごくごく”普通の”家庭を楽しんでいる。
『そうそう、エスターはお友達なんですか?』
『ええ。こっちに来て最初に出来た友人。彼女、さっぱりしてて気取りがないでしょ?』
『そうですね。まだあまり長くはしゃべっていないけど、なんだか好きです。気が合いそう。』
 空港からは車で3時間ほどかかった。
 屋敷に着いたのはちょうど遅いお昼の時間だった。
『用意してあるの。待ってて。スナイを呼んでくるわ。一緒にお昼にしましょう。』
『ナナ!』
『スナイ!』
 なんだかもうすっかり姉弟のような気分で抱き合った。イサクもうれしそうだった。
『来ない間もなんだか宿題出されちゃってココロが忙しかったわよ。』
『ふふふ。まずは食べようよ。どうぞ、テラスへ。』
 ワシリーの家庭的なランチを味わいながら、さっそく話題は夢の話になった。
『ヤマトタケルでしょ?僕もあの時初めて知りました。ナナは知ってるでしょ?』
『ええ。なんとなくは日本人なら知ってるけれど、もう一度その神話は読み返してみたわ。』
『どんな風に思った?』
『ただ強くてかっこいい英雄というんでなくてけっこう粗野で思い上がってもいるんだけれど、意外にナイーブでせつない話でもあるのよね。でもなぜヤマトタケルなのかしら。』
『日本の父とされるイザナギノミコトから今、ヤマトタケルを見なさいというメッセージだろうね。』
『どういうこと?』
『今の日本はそこから学ぶべきものが多いということじゃないかな?』
『思い上がるな、ということ?』
『それもそうだけど、それだけじゃなくて。神話のメタファーは8通りに読めと、僕らは代々教えられます。』
『8通り?ワーオ!』
『彼は日本のある面をよく象徴しているかもしれないね。おそらく今あちこちでヤマトタケルについての情報が湧いて来ていると思う。情報が出てくる場合は必ず意味があるからね。いろんな形で出るから、ひとによっては自分はヤマトタケルの生まれ変わりだとか言い出すかもしれないけれど、大事なのはそこからなにを読み取るかです。その出方だけにこだわらないですすむ道しるべにした方がいいです。動くためのヒントですから。でないと自分は特別だと思い込む道具で終わってしまう。そういう狭いメッセージではないんです。いずれその意味の輪郭はおぼろげに立ち現われてくるでしょう。』
『なるほど。』
『点と点は線になり、やがて面になり地図はおのずと浮かんでくるんです・・。』
『そうね。そうかもしれない・・。』 
 そこでイサクが割って入った。
『ところで、今回のスケジュールなんだけど、まるまる3日間しかとれなかったんだ。』
 スナイは口笛を吹いて
『さすが忙しい日本人だね。OK。僕が思ったのは僕の家に伝わる古文書を伝えることと、リーディングなんだけど、どう?』
『なるほど、そうすればまずは”こっち”の輪郭がつかめるかな?』
 そういってイサクは笑った。
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