ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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スナイ

 夕方。仕事が終わった町のひとびとが三々五々パブに集まってきていた。
 わたしはマーシに紹介されたのは年輪を重ねた古老だと勝手に思い込んでいたので、スナイが入ってきたときは気にもとめなかった。
 彼は赤いチェックのシャツを着てGパンをはき、メガネをかけた細面のごくありふれた高校生だったからだ。
 髪は赤みがかった茶色できゃしゃで、白い肌にそばかすが浮いていた。
 彼はざっと店内を見渡して、まっすぐわたしの方へやってきた。
 はにかんだ、ひかえめなブルーグレーの瞳。
 しかし小さいけれど落ち着いた声できいた。
『ナナ?』
 わたしはしばしその意味がつかめずスナイの顔をみつめ、それからやっと返事した。
『あなた?』
『はい。僕です。マーシから電話をもらいました。スナイ・ルカックです。ヨロシク。』
 といって細い腕を差し出す。
『ナナ・モリシマ。ヨロシク。』
 まるで女の子のようなきれいな手だと思いながら、その手をにぎりかえした。
 わたしはイサクと目を合わせながらやはりどこか違和感をぬぐえずつぶやいてしまった。
『若いのねエ。』
 スナイは軽くニコッとしてほんのり頬を染め、
『僕の父も若い頃継ぎました。』
 と答えた。その感じがとても素直でわたしは好感をもった。
 イサクがいった。
『ナナの仕事のパートナーのイサクだ。イサク・オダ。よろしく。』
 スナイは軽くうなずいた。
 マーシがサンドイッチとコーヒーを運んできた。スナイに笑いかけるとスナイも微笑んだ。
『さっそくだけど、あなたの家っていうのはどういうお家なの?』
『ネイティブ・アメリカンの流れをくむのかハッキリしませんが古い部族の末裔で、ネイティブのような古い智慧やシャーマン的な役割が伝わっています。』
『ネイティブ・アメリカンとは別の流れがあるかもしれないって?フーン・・。この町ではどういう役割を負っているの?』
『町や人々の行方をみるのが大きな役割です。』
『行方?』
 わたしたちはまた顔を見合わす。
「占いみたいなことかしら?」
『あなたはそれがすでに出来るってこと?』
『幼いときからやってました。僕の父もそうでした。』
 そしてちょっと言葉を切ってわたしの方を見ながらつけ足した。
『その、僕のような人間は”ナナの声をきく者“とか”ナナの目でみる者“という意味のナナンと呼ばれています。』
『”ナナ”?』
 わたしとイサクは同時に声をあげた。
『その”ナナ”っていうのは?』
『山にあらわれたソウル(たましい)のことです。山があるでしょう?あの山のてっぺんに”ナナ”を祀ってます。もうずいぶん古くからです。』
 わたしはそれをきいてマーシやゴジィがはじめてわたしの名をきいた時のミョウなカオを思い出した。
『僕・・。』
『何?』
『実はあなたが来ることは去年の冬からわかっていました。』
『どういうこと?』
『何度も夢に出てきました。』
『会ったこともないこの顔が?』
『会うことになることはわかっていました。』
『・・・。』
『それと・・。』
『何?』
『・・・。あなたがこれからすることも時々みます。』
『何をするの?』
『それは言えません。ナナンのおきてだから。』
『どういう意味?』
『ナナンは未来がみえても、”ナナ”の許しがなければそれを語ることは出来ません。』
『それじゃあなたになにかをきくことはできないの?』
『いいえ、”ナナ”の許しのあることならば。』
『どういう風に許しは出るの?』
 スナイはまたほんのり笑ってみせ、頭をかいた。
『それは説明のしようがないです。わかるんです。いっていいのかどうか。』

 客達のざわめきのなかで、わたしは少しめまいを覚えていた。
 イサクの方が冷静だった。
「なるほど。まだよくわからないけど、もっとよくここのはなしを聞いてみたいってことには違いない。そうだろ?」
「そのようね・・。」
 そう答えながらわたしは急速に意識が薄れていくのを感じていた。
「ナナ!」
 イサクやスナイが叫んだのはおぼろげに聞こえた。マーシの声もしたようだった。
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