ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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空ゆく舟

 朝食が少しこなれると、わたしたちはまた例のように庭の小道をたどっていって東屋でスナイの清めの儀式を受けた。
 前回の時よりも気温が高く、赤々とした土の地面は暑く感じられた。
 また一歩一歩かみしめるように登っていく。
 高齢のナンネクはしかし、しっかりした足取りはスナイばりで安定していた。
 ”展望台”に出る。
『ここからの夕陽も素晴らしいと言ってたわね。そういえば。』
『ええ。そうだ、あれがホキパニの丘です。祭りの夜はたいまつの火がきれいですよ。』
『なるほど、ここから見るとまるで舞台みたいね。』
 さらに登る。期待感に手がしびれてくる。
 不思議なものでわたしは幼い時から期待感がつのると胸苦しさを感じるかわりに手がきゅんとするのだった。こころは手にあるのだろうか、と思ったりもする。
 山頂に出た。
 とたんにやはりからだがふくらんでくる感覚に陥る。
 スナイはまたひざまずくと祈り始めた。
 するとわたしはまた一気にめくるめく映像に飲み込まれていった。
 
 蓮の花を持ったわたしは長い参道を通ってたどりついた神殿の前に立っている。
 それは白木で出来ていて、写真で見たことのある伊勢神宮のようなうつくしい造りの神殿だが、垣根もなくこじんまりとシンプルだった。
 坂を登り切った崖の淵にあり、入り口の両脇には水が湧いて滴り落ちて流れる瓶があり、そこにもうつくしい蓮の花が咲いている。
 そこの前に立った時、なんともいえないせつないような喜びのさざめきを細胞のレベルで全身で感じ取ってわたしはとめどなく涙を流した。
 気がつくと扉は開かれていて、わたしは神殿の入り口から中を見通していた。
 そこには御神体というものはなく、つきあたりの壁は全て扉で開け放されていて背後にひらける青い空だけがあった。
 そして、わたしは蓮の花を捧げるために神殿の床にそれをそっと置くと、ゆっくりと歩いてその空に向かった。
 そして当然のようにそこから”飛び立った”。
 わたしは白い羽根ではばたいていた。
 はるかには河がそそぎこむ海が光っており、そこへと向かっていく。
 いきおいのある風のながれをほおで感じていた。
 瞬間後に、気がつくとわたしは地球を見下ろしていた。眼下には光り輝く球体があり、その星のうつくしさは言語を絶するものだった。
 わたしのまわりに同じような存在を感じていた。そこにはスナイやイサクやわたしのまわりの人々がみないるようだった。
 これははるかな過去なのか未来なのか。もしかすると現在(いま)なのか?そこにはおだやかな安らぎがあった。
 ナンネクのうたがきこえた。
 ふっと我に返ると”ナナ”の山の山頂にいる自分に気がついた。
 ちょうどナンネクのうたが終わった。
 イサクがまた鼻をすすっている。
『さあ、それではもどりましょう。』
 そういってスナイはにこにこして歩き出した。
 前と同じように展望台のところまで降りて来てやっと口を開いた。
『あれは・・いったい・・。』
 前を歩いていたスナイがふりかえらずに言った。
『高い次元のあなたの出所に再会したのです。ヒトは隕石のように地上に降りて来たけれどまだ燃えている。そのしっぽをたどると出所があります。そこにはあなたである光の存在の場所があります。冷えきってしまうとその出所を思い出すのがむつかしくもなりますが、でもあるのです。』
『空がなつかしかった・・。』
『・・空はふるさとに近いですね。特にあなたには。あなた自身といってもいいかもしれません。空をゆく舟だったのです。』
『空?』
『たましいの様々な状態を名づけたものです。炎で照らす者や虹をなぞる者などいろいろなグループがありますが、あなたはスサナで空ゆく舟です。僕らの兄弟であるマヤではそれは空歩く者と呼ばれています。』
『じゃあ、俺は?』
 イサクがきいた。
 スナイがふりかえってふふ、と楽しそうに笑うと言った。
『あなたもスサナで翼ある蛇。ナナは翼ある蛇に守られているから、ナナの守護、といった星まわりですね。』
『だからついナナを手伝ってしまうのか。』
『はははは。』
 可笑しそうに声を立ててスナイは笑った。
『ナンネクはなんなの?』
『ナンネクはルルネで夜の守人です。』
『じゃ、あなたは?』
『僕はアムタで星の種。父もアムタで太陽の帆。母はルルネで白金の風です。』
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この記事に対するコメント

お話の筋と関係ないのですが‥ 私も、旅行の前とか、本番の前、特別なことがある前に「手」に来ます。チリチリするような感じ。
作者の方もそうなのかなと思って、嬉しくて書き込みました♪
てい | 2006/10/22 7:05 PM
そうですか!うれしいですね、仲間がいた。そうなんです。ともだちに会う前にもなることがあります。ふつうは胸がドキドキとかいうのでしょうが、わたしの場合は手だったりします。
Iwaswa Kumi | 2006/10/22 9:20 PM
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