ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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エゴの種

 下に降り切って屋敷で昼食をとることになった。
 パンケーキに手作りのすぐりジャムやマーマレードをぬって、チャイとともにいただく。卵とレタスのサラダもあった。
『ところでイサクはどうだったの?』
『そう、俺はずっとエゴっていうものに引っ掛かっていてそのことの答えをもらったようだ。』
『エゴ?』
 レーネンが聞いた。
『ええ。合気道をやっていてじゃまになるのはよけいなエゴなんですが、やっかいだと思えば思う程自分の尽きることのないエゴの大きさに打ちのめされることもあります。ナンネクにはそれがまるで空気のように感じられない。どうしたらそうなれるのだろうと。』
『それで?答えっていうのは?』
『驚いた。エゴの種の中になにがひそんでいると思いますか?』
『種?ふ〜む・・。なんだろう?ナンネクはどう思う?』
 レーネンはナンネクを見た。
 ナンネクは思慮深い目をして口を開いた。
『・・それは、もしかすると・・。エゴのまるで正反対のようなピースフルなものでは?』
『さすが!そうなんです!その通りです!なんだか分からないがそのことだけがまっすぐすとんと僕のむねに落ちてきた。そしてそのことに僕は大いに納得し、予感するのです。エゴはそれを守る種の皮みたいなものではないかと。こつんとあたるそれは中にはかりしれないものを抱いている・・。』
『つまり、”それ”が芽を出してくるとエゴがはじけて開いて、”それ”は育ち、ひろがってうつくしい花が咲くのかしら?』
 ワシリーが興味深そうに目を輝かせながらきいた。
『ただ、エゴの種は限りなくたくさんあるようには思えますね。』
 と言ってイサクは苦笑した。
『だけど。』
 わたしは思い出して言った。
『日本には古代ハスというのがあるのですが、それは発掘された二千年前の古代の種から現代に花を咲かせたといって話題になりました。二千年眠っていようが時がくれば咲くことができるのです。わたしはその蓮の花が、まるでイサクのいうヒトのエゴの種から咲く花のように今思えました。たとえとうていありえないように思えてもいのちの方が上をいくことがありますね。』
 すこし皆それぞれの中の花を想った。
『素敵なはなしね。イサクは”ナナ”に触れてそれを感じたのね。』
 ワシリーはやさしげな瞳でイサクに笑いかけた。
『驚いていますよ。声も聞こえないし、何か見るわけでもない。ただたったの表面の自分ではとうていありえない発想ですから、自分だけのものではないのだという手触りがするのです。』
『あの場では垣根がなくなるのでそういうことはありますね。つまり、エゴの皮がむけるのかな?』
 スナイが言うとイサクは笑った。
『ハハハハ、なるほど。』

 その晩はワシリーが町の婦人会の集まりで出かけるために夕食はマーシのところで取ることになった。わたしたちは午後からマーシの店へ行くことにした。
 ナンネクとスナイとわたしたちはレーネンの運転で店に向かった。
『おひさしぶりです!』
 ドアを開けながらわたしとイサクはマーシとゴジィに声をかけた。
『まア!いらっしゃい!よく来たわね!』
 マーシが焼き立てのパンのようにふかふかと笑った。ゴジィも目尻が下がっている。
『おそろいでどうしたんだい?』
 レーネンが片手を挙げて、
『今日はここでディナーだ。』
 とおどけた。
『それはそれは光栄だね。』
 ゴジィがミネラルウォーターやレモネードを持ってテーブルにやってきてわたしとイサクに聞いた。
『あんたたちはなんにする?』
『わたしもそれと同じの。レモネード?』
『俺はコーラ。』
 ゴジィはミネラルウォーターをレーネンとナンネクの前に置き、レモネードをスナイの前に置くと親指を立ててウインクした。
 マーシがフライドポテトの山とピクルスを持って来て、
『これでもつまんでて。』
 といってみなにぐるりと笑いかけた。
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