ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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 気がつくとこじんまりとした部屋のベッドに寝かされていた。
 見下ろすイサクの顔があった。
「だいじょうぶか?ビックリしたよ。」
「うん。だいじょうぶ。ちょっと疲れたのよ。スナイは?」
「また明日会おうって。まア、今夜はゆっくり寝るんだな。」
「わかった・・。」
 そう答えるそばから引き込まれるような眠りに落ちていった。

 そこは白くてきれいなところだった。
 高いところから見下ろしていた。
 霧のようなもやが切れると山々が見えた。
“ナナ”の山だ。
 それがなんと無数に見える。
(ここはどこ?“ナナ”のふるさと?)
 自分が飛翔しているのがわかる。
 やがて地平線に輝くとてつもない光に飲み込まれて天地も分からなくなった。
 声がきこえる。
 きいたことのない、ひとでないような鳥のようなささやき。
 その声には色があった。ささやくたびキラキラと光の粒のようなものにまみれる。
 光り輝く黄緑、桃色、黄金色。
 ひとつの音ではなく、さざめくような波のようなハーモニーの波動を浴びてわたしはわたし自身も光り輝いているのを感じていた。
 どういうわけか
(全てわかっている。)
 と思えた。
(なにが?)
 説明つかない全体的な自分がいた。
 もしかするとこれがわたしなんだろうか?
 いや、そんなこと『わかっている。』
 たったの一部である自分から全部である本来の自分にもどっているだけなのだ。
 涙は泉のごとく湧きに湧いて尽きることを知らないようだった。
 でもそれはセンティメンタリズムからはほど遠い、せつないほどなつかしい歓喜のしわざだった。
 ちっぽけな自分の傷の痛みがいやされるとかそういう次元の涙ではなかった。
 傷という概念はその次元には存在しなかった。たましいというのはどこもいびつではない完璧な円を描いたこれ以上ないくらいの完全なものだった。
 なににも汚されることのない気高いものだ。
 それそのものにがつんと触れるとき、どんな極悪人もおそらく泣かずにいられないだろう。
 ささやかれる言葉のようなものは自分の知っている言語には置き換えられないが意味は透明なクリスタルのような自分の脊髄にずしんと響いていた。

 目覚めると鳥のさえずりがきこえた。
 一瞬どこにいるのかわからなかった。
 自分が何者かも思い出せなかった。
 部屋をノックする音がした。
 マーシが顔をのぞかせた。
『どう?気分は?』
 思い出した。
『いいわ。ちょっとからだが重いけど。』
『朝食は?食べれるでしょ?』
『そうね。いただきます。』
『よく眠れた?』
『ええ。でも不思議な夢を見たわ。見たことないような不思議な夢。』
『どんな?』
『ひとことではいえないけど、”ナナ”の山が出てきた。』
『そう。』
 マーシはゆっくりと深くうなずくと
『今ここの宿のエスターが朝食を持ってくるわ。ゆっくりしてらっしゃい。』
 といって出ていった。
 しばらくぼうぜんと窓から差し込むやわらかな光をみつめていた。
 そして自分のからだを確かめるようにベッドからゆっくり足をおろした。
 ノックがして同年代の20代後半くらいの女性が顔を出した。黒い瞳が印象的な雑貨屋のエスターだった。
 カーペンターズのカレンのような笑顔を見せながら
『スクランブルエッグでいいかしら?エスター・クランチよ。宿「雑貨屋」にようこそ。』
 と片手に朝食のトレーを掲げたままもう片方の手を出す。
『よろしく。ナナです。あの、わたしの連れはどこにいるのかご存じですか?』
『ああ、彼ならゴジィの家にいるわ。ゆうべはそこへ泊まったの。なにぶんここはひと部屋しか空いてなくって。』
 わたしはうなずいてせいいっぱいの感謝の笑顔をむけた。エスターはウインクして返し、てきぱきと出ていった。
 フレッシュジュースを口にしながら夢を反すうした。
(なんというなんという夢だったろう。あれはまるで実体験のようだった。”ナナ”に関係があるんだろうか?)

 身支度して下に降りた頃、ちょうど雑貨屋の店の扉を開けて入ってきたイサクとはち合わせた。
「よう!どうだ?」
「もういいわ。それよりすごい夢をみたんだけど、スナイにはいつ会える?」
「ちょうどそのことで来たとこだよ。きょうは家のほうに来ないかってお誘いだ。今から出れるか?」
「モチロン!」
 まわしてくれた車に乗り込むと、イサクは勝手知ったるようにすぐ発進した。
「夢って?」
「スナイと一緒にきいて。ちょっとぼうぜんとしてるのよ・・。」
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