ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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ゲスト

 リビングに入るとレーネンが若くなってほっそりとしたような背の高い黒髪の青年がナキアとじゃれあっていた。こっちを見て洗いたてのタオルみたく清潔に笑った。
『紹介します。兄のアキレーです。シカゴで弁護士事務所に勤めてます。』
 居心地のいい家庭だった。
 ナキアが笑うのもごく自然だった。

 夕食は早めに始まった。
 ワシリーとナキアがきゃっきゃっとなんだか楽しそうにテーブルに料理の数々を並べ出した。大人数で手伝うとあっという間にテーブルは整った。
『まずは乾杯しよう。”ナナ祭”に。そして出会いと再会に!』
 レーネンの音頭でグラスを掲げた。
『どうだった?日本では。』
 さっそく水を向けられて、わたしはこの4ヶ月のことを順繰りに語りだした。
 そして、マリさんたちにも話した日本という土地に抱いた自分の想いを語った。
 みんなは融合を持って耳を傾けてくれた。
 ナンネクが口を開いた。
『ナナのいうことはわかる。わたしもマウントフジには行ったことがある。世界には様々な聖地があり、聖なる山もたくさんある。わたしは山はどうしてできたのだろう、そしてどうして山は聖なる場所なのかといつも想ってきた。』
『ナナのいう、そこから世界をいやす、というようなことはできるのでしょうか?』
 イサクがきいた。
『わたしにはわからん。けれどもそれはなにか大事な導きだ。』
『”ナナ”の祭りの前にそんな風に想ったとすれば、きっとなにかいい方法が見つかるよ。』
 アキレーがおだやかに声をかけた。
『アキレーはナナンというのをどう思いますか?ルカックに生まれたことを。』
 わたしはそのおだやかさに惹かれて聞いた。
『僕は幸か不幸かナナンではなかったけれど、この家に生まれたことでまっすぐ自分のやりたいことに向かえている気がするよ。僕にはもうひとつの感覚というのはないけれど、幸い努力すると人生が豊かになるという経験をしてきた。それは父や母が僕を信じて見守ってくれていたからだ。そして、スナイの仕事の重要性は家をはなれるほど逆にさらに理解できるようになった。彼は僕らが想像している以上のものを背負っている。僕は僕なりに彼の力になりたいと思っているよ。』
 スナイはテーブルの一点を見つめて手にしたスプーンを無意識に小さくふりながら、アキレーの言葉を聞いていた。最後に少しふっと頬を染めて笑った。
『祭りはあさってですね。わたしたちはどうすればいいんですか?』
 マリさんが頃合をみて口をはさんだ。
『あしたはゆっくりしてもらって、祀りの日はわたしたちと山に登りませんか?』
 レーネンが言った。
『いいんですか?大事なお祀りでしょう?』
 レーネンはスナイを見た。
 スナイはうなずいて
『僕は今までなにも考えていなかったんですが、今わかりました。父がいうように、それはおそらく必要なことなんです。』
『ナナ、翡翠を受け取ったろう。』
 レーネンが言った。
『はい。』
『それはしるしだ。わたしはすぐ分かった。”ナナ”の山が迎える今年のゲストだ。』
『ゲストっていうのはなんですか?』
『毎年どういうわけかだれかしらやってくる。そして世界にちらばっていく。今年は君らだ。たぶんナナが日本でとらえた大きな感覚となにかがつながる。』
『あの・・。』
 遠慮がちにケンが口を開いた。
『オレはどうすれば・・?』
 マリさんとわたしはケンのことをすっかり忘れていたことに気がついて笑った。
『モチロン一緒に登ってもらいますよ。』
 スナイは当然といった顔をして答えた。
『ケン、あなたはスサナで翼の盾です。』
『?』
『つまりあなたがいないと翼あるものははばたけないのです。』
『翼?』
『ああ、ナナやイサクのことじゃない。』
 マリさんが合点がいったように声をあげた。
 わたしもイサクも驚いて顔を見合わせた。
『そういう関係なの?』
 ふふふふ、と笑いをこらえるようにスナイは
『今ここにいる人々に関係のない人も必要のない人もいつもひとりもいないんですよ。気がついてないひとは多いけどね。』
 と言って天を仰いでレモネードを空にした。
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