ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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 スナイは特別な精進潔斎のためにそれから姿を消した。
 レーネンはそれを手伝い、ワシリーとナキアは雑貨屋へ買い物に行った。バッティはもちろんレポートに取り組んでいる。
 わたしたちはナンネクとアキレーと庭に出て散策した。
『スナイがね、わたしたちのことを”ナナ”がこう言っていると伝えてくれたんです。』
 わたしはホキパニの丘できいたわたしたちの構図をふたりに話した。
『なるほど、あんたは水路なんだな?』
 ナンネクはかたわらのマリさんを見上げた。
 マリさんは微笑むと
『水路からするとナンネクからはバイオレットの澄んだ水流が流れてきます。』
『ほう。』
『そんなことを感じるの?』
『みんな色を持ってるわ。』
『じゃ、オレは?』
 とイサク。
『澄んだ青緑。そして面白いことに時折り炎のような赤い色も感じる。』
『オレは。』
 ケン。
『空色と紺が混じってる。それと時々まぶしいようなシルバー。』
『アキレーは?』
 イサクがきいた。
『シックで落ち着いた赤紫とあかるいきれいなグレー。』
 そしてこっちを見ると言った。
『ナナはね、レインボーなの。真ん中は白に近いレモンイエローもしくはうっすらとしたピンクを帯びる時もある。ちょっと他では感じたことないわね。あんまり。それにどんどん変わってるし。』
『ああ、それはスナイもそんなことを言っていたな。』
 アキレーがうなずいていた。
『へーえ。面白いもんだな。』
『でも、銀河の水路に流れ込む水脈?ってなに?それがどうなるっていうのかしら。』
 わたしはつぶやいた。
『そうだよな。オレらがなんだかわからないなりにその役割を果たすとして、それはいったい何にどう作用するんだ?』
 とイサクも言う。
『オレなんか全く自覚がないのにどうやって柵なんかしろっていうんですか?』
 ケンは頭をかいた。
『ケンはわたしはなんだか分かる気がしてきたわ。』
 マリさんが言った。
『あなたはまわりの闇にチャンネルを合わす回路が開いていないのかも。』
『?』
『例えばナナは多チャンネルだから、光にも闇にもチャンネルが合ってしまうわ。それも深い闇に。両刃の剣でそれは一歩間違うと闇に飲み込まれる。イサクから感じる赤いエネルギーも地からくるものでそれはパワフルだけれど翼のあるイサクを地に縛るものよ。それらが干渉できないのがあなたなのよ。』
『ふーん・・。で、オレはどうすれば?』
『きみはきみらしくあればいいのではないか?それが盾であり、柵ということではないのか?』
 ずっと聞いていたナンネクがそこで一言はさんだ。
 みんなふと立ち止まった。
 それぞれがそれを自分のことととらえていた。

 やがて陽は午後の橙色の光を帯びてきた。そして昼食にも姿を見せなかったスナイが再びわたしたちの前に現われたのは、空に紅色が混じり始めた頃だった。
 彼は麻のような生地のシンプルな白い服をまとっていて、それはすこし日本の古代の衣装に似ていた。
 ちょうど眉間のあたりに翡翠のような深緑色の石がくるように頭にひもを巻き、胸にはクンツァイトの首飾りをかけていた。
 あらかじめ説明されたことわりでは、祀りの間いっさいスナイと口をきいてはならないということだった。
 スナイはわたしたちに目で微笑むと、庭の東屋へと向かっていった。
 わたしたちは軽い食事をとって陽が落ちてからたいまつを持ってナナマウンテンを登る。
 その頃には町中の人々が同じようにたいまつをかざしてホキパニの丘に登るのだ。
 わたしは手がきゅんとしてくるのを感じていた。少し耐えかねて手をさすっているとマリさんが微笑みながら背中をかるくたたいた。
 マリさんにちょっと笑みを返し、
「夜のナナマウンテンは初めてね。」
 と、となりのイサクに声をかけた。
 イサクはうなずいた。
「そうだな。なんだかさっきから足にとりはだが立ってるな。」
 ケンは観念したようにたんたんとしていた。
「もう矢でも鉄砲でも来いですよ。」
 みんなから失笑がもれた。
 アキレーが迎えに来た。ルカックのものはみな、スナイが着ていたような白い服に着替えていた。
『さ、出発です。』
 だれもそれから口を開くことをせず、アキレーのあとにわたし、イサク、マリさん、ケン、ナキア、バウアー、ナンネクの順に続いた。
 
 たいまつを持って夜道を行けば、まるで見たことのない風景に見えるから不思議だ。
 東屋のところまで来た。
 中には美しくお祭り用の祭壇がしつらえられてあり、灯されたかがり火に照らされてそれは赤々と映えていた。
 正面にスナイが葉のついた枝を持ち静かに立っている。その両脇を介添えるようにレーネンとワシリーが水差しと花びらを手に待っていた。
 わたしたちはひとりひとりまず水差しの水で手を清め、次に頭にスナイの枝の清めを受け、最後に花びらを一枚口に含んだ。
 それはほのかに甘い味がして飲み込むとからだがまるで咲くようにひろがるのを感じた。自分のりんかく線がひろがり、大気に溶け込むようだった。
 ひととおりの清めを済ませると、スナイは先頭に立ち、山の入り口へと足を踏み入れた。
 わたしたちはさっきの順番で一列にそれに習う。
 列の最後にアキレーとワシリーとレーネンがついて、11本のたいまつはしずしずと山を登り始めた。
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