ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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GOD HANDS

 ルカックの人々に見送られ、わたしたちはアメリカをあとにした。
 そして予定よりも1日早く成田にもどってきた。
 空港でマリさんは思いついたように言った。
「麻賀多神社に行ってみる?1日早いことだし。」
「あっ。そうですね!」
 以前きいたヤマトタケルのゆかりの神社。成田から近い。
 わたしたちはタクシーに乗り込んだ。
 神社は空港から車で30分くらいのところだった。成田のニュータウンを抜けて、緑多い町外れに赤い柵で囲まれてそこに静かにあった。
 パトカーが止まっている。
「お祭りでもあるのかしら?」
「さあ・・・?ここはね、昔ある人に神が降りて自動筆記を始めた場所としても知られてるわ。ご本尊は天照大御神の姉神とされているのだけど、そっちの降りてきた神様の方が有名になったわね。本もいっぱい出てる。そちらは小さな祠のようなお社に祀られているんだけど・・。」
 と、マリさんの説明を聞きながら本殿前の階段を登ると警察官と地元の人らしき人々が5、6人、何か頭を寄せ合って話し込んでいた。
「あっ!!」
 マリさんの声にわたしたちはとまどうと、マリさんはわたしたちの方を向いて言った。
「その、お社が焼けている・・。」
 マリさんは近くにいた人にきいた。
「どうしたんですか?」
「今朝、放火されて焼けたらしいんだよ。」
 わたしたちはあっけにとられて言葉もなく一瞬立ち尽くしたが、気を取り直してその現場に近づいていった。
「まだ煙が立ってる・・。」
 ケンがつぶやいた。
「よりによってこんな時に居合わせるとはな。」
 イサクもつぶやいた。
「待って。」
 マリさんはそういうと小さなお社には不釣り合いなような広さのそこのコンクリート敷きの空間に立った。
「・・・焼けても失われてないわ。」
 そうわたしたちに小声でささやいた。
「今焼かれるというのも意味深いわね。かたちあるものから少しはなれなさいというメッセージにもとれるじゃない・・。」
 と言ってフフと微笑むと
「こっちに樹齢1300年の御神木があるの。」
 そういってわたしたちをうながした。
「ここはヤマトタケルが立ち寄って勾玉を埋めてこの土地の五穀豊穣を祈ったと言われているんだけど、それはあまり大きく言われてないわね。」
 本殿を拝んで左手の方へと行くとその御神木が見えてきた。それは遠目にも他の木と違っていた。杉だというが、神々しいような白っぽい木肌を見せていた。
「素晴らしい木ですね。」
「御神木というだけあるな。」
 そのあたりに小さなお社が並んでいた。順番に拝んでいった。一番最後のお社まできて拝んでいるとふいにつぶった目の前があかるくなった。
(陽が差してきた?)
 3人が拝み終えて振り返ると、マリさんは最後のお社でまだ拝んでいた。
 思いのほか長い。
 ようやく拝み終えてこちらにやって来ようとして、ちょうど通りすがりの地元の人をつかまえてマリさんは何かをきいた。
「どうかしたんですか?」
 マリさんはちょっとにこっとすると、
「どなたをお祀りしているのか聞いたのよ。」
「で?」
「あの最後のお社は古峰神社といって御祭神は日本武尊ですって。」
「えっ!?」
「えらく長かったですけどなにかあったんですか?」
 イサクがきいた。
「それがね、フフフ。ワッハッハと笑う印象がして、なんだろうと思ったら英語でGOD HANDSときこえたのよ。」
「GOD HANDS?」
「そう。」
 そういってマリさんは愉快そうに笑った。
 わたしもつられてくっと笑った。
「ナンネクが前にそんなことを言ってたわ。悩むことも迷うことも忘れて小さなGOD HANDSのひとつとして前へすすみなさいって。」
「あらそう。まさにその念押しじゃない。」
「ほんとにわたしたちはひとりじゃないんですね。」
「そうよ。わたしたちひとりひとりの後ろに地球の歴史分の意識が連なってるんだわ。」
「じゃ、たまたま今その列の一番前の役をやってるってこと?」
「たまたまなんてないけどね。今生きてる人でGOD HANDSでない人はいないかもしれないわ。責任があるの。この肉体を持って生まれるのは大海に浮かんだ木切れの穴から亀が首を出すような確率らしいわよ。だからそれを忘れて代表である生き方をしないと自分で自分の首をしめて苦しくなる。」
「そっか、責任が大きくて生きるのがなんだか苦しくなるから、だから人に当たって気を紛らわそうとするんですかね?」
 ケンが気がついたように言った。
「いいこというじゃん。」
 イサクが混ぜ返した。

 わたしたちはそこを出ると車でさらに30分くらいのわたしのマンションまで帰ってきた。今日はここで雑魚寝することにした。
 暑い中、時差ぼけでマリさんとケンは着くそうそう横になって寝てしまった。
 わたしは冷蔵庫から氷を出すとイサクに麦茶をついだ。
「なア、ほんとに大学は辞めるのか?」
「うん、明日教授に話す。」
「気が早いな。ちょっと待ってくれよ。」
「イサクは辞めなくていいのよ。これはわたしの仕事なんだから。」
 くっくっくとのどを鳴らしながらイサクは麦茶を空けた。
「ついてけないぜ。ほんとに。で、どうするんだ?まず。」
「わからない・・。」
「えっ?」
「具体的にどうするのかはわからないけど、もう一度富士へ行ってみる。富士山に相談するのがいいんじゃない?」
「相談か、ふふん、それもいいかもな。」
 夕飯もろくに食べずにあとは4人してひたすら眠った。
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