ナナン

ナナの声をきく者 ナナの目でみる者とは?新しい神話が紡がれる――    〜2006/10/5〜11/23*全50話〜

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山頂

 さらに10分ほど登るとついに”ナナ”の山の頂上に着いた。
 そこは思ったより小さなスペースだったが、気持ちよく低木に囲まれて大きな岩盤があった。人力では運べないような四畳半ほどの一枚岩の上にソファーくらいの白い石が横たわっている。
 その空間に出た時、わたしは自分の内側がぐううとふくらむのを感じた。
 皮がつっぱってなにか大気のようなものが充満してくるようだ。
 スナイは今までになく神聖な顔をして岩盤にひざをつくと胸に手をあてた。
 わたしたちもひざまずいた。
 やはりきいたことのないしかしうつくしいうたのような言葉をスナイは捧げはじめた。
 それは抑揚をつけてしばらくつづいた。
 きいているうちにわたしはあたまがすっかりまっしろになっていった。
 目の前に金色の光がはねるようだった。
 それはソーダ水のようにはじけてわたしを覆う。
 スナイのうたうような声のうしろにあの鳥のようなささやきが重なってきた。
 走馬灯のように自分のこれまでの人生が巡りだした。
 
 小さな頃、働いていた母の帰りを待ってひとりで近くの神社で遊んでいたことがあった。小学校にも入る前だ。少々さみしい想いをしながら待ちくたびれて拝殿の階段に座り込んでうつらうつらしてしまった。
 その時10cmくらいの虹色に輝く龍がふっと目の前を過ぎ、うすばかげろうのような
羽根をもつ精霊のようなものも一瞬横切った。ねぼけていたわたしはきれいな夢だと思っただけで目がさめたらすぐに忘れてしまった。
 ずっと忘れていたことだった。
(あれはほんとうにあったことなんですか?) 
 内側に響いてくる自分の声がした。
(あれが夢だって?わかっているくせに。)
 大きくなってからもそういえば一度不思議なことはあった。
 どうしても行かなければならないところへ行く直前、具合が悪くなって寝込んだ寝床でのことだ。
 横になってはいるものの、心配でもんもんとしていた。
 その時目をつぶっているのになんだかまぶしくなって、その光るなにかが自分の身にしみてくるのを感じた。
 それはわたしのからだに慈雨のごとくしみこんできてなんだかわたしを癒しているようなのだ。
(だいじょうぶだ。)と思えた。
 起き上がるとしみこんだ側のからだがそうでない方よりもかるいのに気がついた。
 今の今まで記憶のかなたに忘れ去られていたことだった。
(なんだかわからないけど支援されている。それは気のせいなんかじゃない。なのにそれに気がつかないふりをしてきた。)
(これらはいったいなんなのですか?実在するなにかですか?なぜわたしにこんな経験が?)
 光のさざめきが高まった。
 意味を超えて直接伝わって来た。
(これはわたしだけの経験ではない。そして次元を超えて存在するエネルギーのわたしたちは窓口のひとつ。肉体という3次元の物質はなかなかエキサイティングなシステムだから、十分皆で楽しもうじゃないか。)
 ふうっと光がうすれてスナイの声がしてきた。
『・・きょうはこの時を一緒に分かち合ってくださって感謝します。”ナナ”も喜んでいます。』
 イサクが鼻をすする音がした。
『なんだかわからないけどありがとうっていう気分でいっぱいだ。ありがとう。』
 そういってスナイと握手している姿が目に入って来た。イサクはわたしの顔をみて言った。
「ナナ、どうした?」
 言葉にしようとして言葉をどのように発するのか一瞬思い出せなかった。
『いい時をもったみたい。』
 スナイがかわりに答えてくれた。

 帰り道、”展望台”のあたりでやっと言葉がもどってきてわたしはイサクにきいた。
「・・どうだった?」
『ああ。う〜ん。なんていうんだろうな。とてもあったかくてなつかしい想いが湧き上がってきた。やすらげる感じというのか。別に俺はなにも見えたり聞こえたりはしないけどね、でもこういう感じははじめてだな。』
 スナイはうなずいた。
『ナナは?』
『やっぱりゆうべの夢は”ナナ”の”源”だったんだって思った。そこと再会して今までの自分の歩みを思い出させられて、なんだかワケがわかった気がする。』
『ワケ?』
『いまここにいるわけがね。』
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